インターネットのニュースで、鹿児島市にある「いおワールドかごしま水族館」の「沈黙(ちんもく)の海」という水そうが話題になっていました。さまざまな海の生物を展示した水族館の出口付近に、次のような文が添えられた、何も入っていない空っぽの水そうがあるそうです。
沈黙の海
青い海 なにもいない
もう耳をふさぎたいほど
生きものたちの歌が聞こえていた海
それが いつのまにか、何も聞こえない
青い海
人間という生きものが
自分たちだけのことしか 考えない
そんな毎日が続いているうち
生きものたちの歌がひとつ消え
ふたつ消えて
それが いつのまにか なにも聞こえない
青い 沈黙の海
そんな海を子供たちに残さないために
わたしたちは 何をしたらいいのだろう?
時々あわが上がる以外、何もいない静かな水そうを見て、「不気味だ」とか「こわい」とか、特に子どもたちは良くない印象を受けている場合もあるようです。もちろん、イルカやウミガメなどのかわいい海の生物を観察したり、時にはふれあったりすることができるのも、また、自然の中では決して見ることのない深海魚などの不思議な生き物を見ることができるのも、水族館の大きな魅力です。その点では、この水そうには意味がないようにも思います。しかし一方で、単に「かわいかった」だけではなく、海の生き物に関心を持つきっかけを与えることは重要な役割だとも思います。そういった点で、この水そうは非常に重要なメッセージを発信しているのではないでしょうか。
この水そうは、今は亡き初代水族館館長によって、開館当時から設置されているそうです。もし訪れることがあったら、「なんだ、何にもいないじゃない...」と素通りすることなく、ぜひメッセージに目を向け、その意味を考えたい、また子どもたちにも考えさせたいと思います。
PR